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七瀬ふたたび
作者:筒井康隆
出版社:新潮社
発売時期:1975年
評価:85点
概要:七瀬三部作の第二作目。テレパス(人の心を読む能力者)である火田七瀬は他人に超能力者であることを悟られないために家政婦の仕事をやめ旅に出る。旅の中で自分以外の超能力者に出会い行動を共にすることとなるが、一方で超能力者の抹殺を目論むなぞの集団の存在を知る。次々と仲間が倒れていく中、七瀬は生き残ることが出来るのだろうか。
感想:七瀬三部作の第一作目「家族八景」とでは趣が全く異なる。出版から30年以上経った今でもとても楽しむことが出来た。
まず、逸脱しない世界観。SFとか超能力バトルというものは強さやスケールがどんどんインフレし、結局はとてつもない強さを手に入れた主人公によって事態が終息するものが多い。しかし本作品は、能力の特性を活かし決められた世界観の中で、大きな矛盾もなく非常に綺麗に纏まっていると感じた。SFのように非現実的な世界を描く場合、非現実ながらも絶対的なルールが非常に重要であり、それが全うに遵守されている。(なんでもありになってしまうと少年漫画のようになってしまうのだ。)これによって、多くのSF作品に共通する安っぽさを全く感じさせない。
そして、超能力者であるが故の苦悩。これが唯一前作から引き継いでいるテイストだろうか。本作品では七瀬以外の超能力者の心情も色濃く描かれており、超能力者と一言で言ってもやはり人間であり十人十色なのだなと感じるには充分であった。「現実世界に存在する超能力者」という設定であるため、読者にこのように感じさせることは非常に重要であり、恥ずかしながら読んでいる最中に「本当にそこらへんに超能力者がいるのではないか」とさえ感じてしまった。(それだけ本にのめり込んでしまったということでもある。)
筒井氏の作品はあまり読んだことはなく、SF小説というものもそれほど好んで読むことはなかったが、本作品を読んで大きく考えが変わった。
取り合えず、第三作目の「エディプスの恋人」は未だ読んでいないため、是非とも読んでみたい。